絶対運命黙示録

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黒井ひとみの紙を読むーーさびしい夜に

 


 小指のさきから胸にかけてしん、と痛みがはしる。だれかに、あなたには才能があると認めてほしい。どうしても必要なのだと言ってほしい。そんな咆哮がからだからきこえてくる夜は、黒井ひとみの紙を読む。

 


 さいしょに黒井ひとみを知ったのは昨年5月の文学フリマ東京で頒布された、同人サークルずるやすみの『ストリップが魔法じゃなくても』(初頒布は2020年の11月)。とてもすてきな踊り子さんであるということが熱く書かれていて、いつかみてみたいな、とおもっていた。すると今年に入ってから黒井ひとみが香山蘭の「反戦歌」を引き継いで演るというツイートが流れてきた。「反戦歌」がどのような演目なのかは知らなかった。ただ、調べてみると評判がとてもよかったらしく、絶対にみに行かなければならないという使命感があった。

 


 4月19日、渋谷道頓堀劇場で1回目から3回目までを通しでみた(「反戦歌」は3部作)。北島マヤがいた。まさに憑依型の演技である。内容について詳述することはしない。だが、しっかりとしたストーリー構成に裏打ちされた圧倒的なカタルシスがあった。「反戦」とはなにかを徹底的にみせつけられた。

 


 黒井ひとみはステージの後もすごかった。ポラタイムでは私の気持ちがいっぱいいっぱいになってうまく伝えられていないような言葉の切れ端を拾ってくれて、写真の裏にたくさんのメッセージを書いてくれた。そしてオープンショーでは客席のひとりひとりに向かっての投げキス。最高としか言えなかった。

 


 激しく感情を掻き立てられ、揺さぶられた1日だった。

 


 その黒井ひとみが、5月の文学フリマ東京に、出る。どうやら「紙」を配るらしい。そしてその紙は「私のことを好きなひとにしかみせたくない」という理由で黒井ひとみの好きなところをメモ帳に書いて渡せば貰えるらしかった。ご本人を目の前にしてそのひとの好きなところを書くのはすこし気恥ずかしかったが、書いた。差し入れも渡せた。紙を貰った。

 


 黒井ひとみの紙は、しばらく寝かせたままになっていた。さいきんになってようやく読んだ。私のさびしさにそっと寄り添ってくれるような、優しい文章だった。

 


 黒井ひとみは、私が、私たちが、どこまでだって行けるんだってことを教えてくれた。そして、「好き」という感情を向けてもよいのだということも(もちろん節度も必要だろうが)。

 


 こうして書いていたら元気になってきた。明日からも生きる。劇場で、つづきをみるために。