絶対運命黙示録

だいたいツイッターにいます@wenoim

生活の音


 スーパーのレジ付近の音が苦手だ。バーコードを読み取るピッピッという音はそれぞれの店員の持つリズムに合わせてけたたましく鳴り響いているし、客が買ったものを袋に詰めるガサガサ、ゴソゴソという音もうるさい。できれば近づきたくない場所である。

 


 そもそもスーパーという場所自体が苦手だ。でかでかと値段が掲げられ、「本日のおすすめ品」や「お買い得」といった文字がいやでも目に入ってくる。そしてそういった商品にざわざわと群がる客がいて、少しでもお金を浮かせようと、少しでも「生活」に余裕を持たせようとしている。人間の欲望をまざまざと見せつけてくる。「生」のある場所であることを否が応でも理解させる。

 


 しかしスーパーによってわたしの「生活」の一部は成り立っているし、むしろスーパーがなくては生きていけない人の方が圧倒的多数だろう。そこに働いている人も含めて。

 


 嫌なのだ。欲望にまみれながら「生活」するのが。さまざまな音が迫ってくる中で「生活」するのが。他者が欲望を持っていることがこわい。その欲望に触れてしまうこともこわい。

 


 ほんとうは静かなところにだけいて好きなだけ本を読んで眠っていたい。静かでほんの少しの欲望だけを持って生きていたい。現実にいる他者の欲望などは見ていたくない。そう考えると生きていること自体が嫌なのかもしれない。