絶対運命黙示録

クィアな魔女です

正体不明のままでいたい


 ふわふわ〜とか、ぐにゃっとか、そういう、てざわりがあるようでないようで、つかめなさそうな感じでいたいのに、そうでいさせてもらえない気がしている。そうでいさせないのはほかでもない私自身なのでどうしようもない。

 


 セクシュアリティがわからない。前はもっとはっきりとレズビアンだとか、クワロマンティックだとか、流動的ながらもそのときのアイデンティティがあった。それなのに、いまはほんとうになにもかもがわからなくて、クエスチョニングというのもしっくりこなくて、そもそもクィアを名乗っていいのかとか、でもいろいろ悩んでる時点でマジョリティではないよね?とか考えてしまう。

 


 私はこうなんだ、とはっきり言えたほうが楽なんだろうけど、はっきりさせたくない気持ちもあって、でもだれか(だれかって、だれ?それはたぶん私自身)に認めてもらいたいからはっきりした名付けを必要としている。

 もがいている。なにか天からの啓示みたいなのがあるんじゃないかといろいろ試してみてはやっぱり違って、自分を、ときにはひとを傷つけて終わる。クィア向けのマッチングアプリとかを使っていろんなひとと知り合ったが、そのだれもが「精神的に不安定なひとお断り」をマイルドにした文言を掲げていて、私は「いかにも自立した人間です」というふうをよそおってチャットをする。つかれる。だからだいたいのアプリを消してしまった。アカウント自体は削除していないので、アプリのなかにはからっぽになった私のアカウントが漂っている。

 


 こころの相談窓口的なものに電話をかけたら珍しく繋がって、話を聞いてもらったんだけど、「そんなことはないよ!あなたはほんとうは自分があって、ちょっとさびしいだけなんだよ!」って言われて、言いたかったことを伝えられなかった感じがしてやだった。

 


 私はすごくさびしくて、それはほかのひともそうなんだよと言われたところでどうにかなるものでもなく、私は、私のさびしさのことを言っているのに、みんなそんなものだとかそういうふうにまとめられるのは違う、と思う。

 


「人類にあまねくふりかかる呪い 世界の決まり」

「あと何万年生きたって悩まない日はないし誰が隣にいても孤独じゃなくなる日は来ないから」

「永遠に孤独だけど孤独なのは自分だけじゃないし繋がらずに生きてはゆけないから終われない それも世界の決まりよ 安心でしょう」

ヤマシタトモコは『HER』でこんなことを登場人物に言わせていて、まじですごいなと思った。ときどきおまもりのように読み返してはふんふんとなるが、でもやっぱりさびしいものはさびしいし、さびしいって言ってもいいようになりたい。