学部時代の女ともだちが結婚していた。だれにも言わずに。
それがわかったのはLINEの名前が変わっていたからだ。なんの気なしにトーク欄を遡っていたら見覚えのない名字がある。それがともだちだった。
さいしょ、私だけがそれを知らされていなかったのだと思った。ほかの学部時代のともだちに確認するとどうやらみんな知らないようだった。
私は彼女のことがとても好きだった。淡々としているが好きなもののこととなると夢中になって話しだすところも、人との距離をかなり空けているところも、恋愛や結婚といったことがらに一切の関心を示さず、むしろ嫌悪感すら抱いているといったふうなところも。
だがこのざまだ。彼女はだれにもなにも話さず結婚してしまった。詳しい事情なんか知らない。知りたくもない。結婚して名字を変えた。それだけだ。
感情がめちゃくちゃである。勝手に好きになって勝手に裏切られた気分になって勝手に怒って勝手にしあわせを願っている。
結婚をしあわせと安置にイコールで結ぶなんてことはしたくないが彼女のこれからの人生に幸多からんことを祈っている。ちくしょう。
姓の変わりし女ともだちの祝い事にひそと涙する魔女ひとりあり
結婚はせぬと誓ったともだちよ魔女の誓いを破りし誰そ彼
憎む我にしあわせを願う我もいて友の静かに去りゆく小指