絶対運命黙示録

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映画『ブックスマート』感想 あたらしい指針

 

 プライムビデオで映画『ブックスマート』をみた。この作品を映画館でみられなかったことをただただ後悔している。それくらいすごい映画だった。主人公たちの部屋に飾られたフェミニズム関係のポスターの数々、ことばの端々にちりばめられたフェミニスト的ジョーク、エイミーとモリーの合言葉「マララ」……。

 


 高校生活のすべてを勉学にささげ、輝かしい進路を手にしたと思いきや、その間に遊んでいた同級生たちもいい進路が決まっていたというショック、そのリベンジとして卒業式前夜のパーティーに乗り込むという決意、なにがなんでも勉強だけで高校生活を終わらせたくないという強いおもい。そのどれもが語られずとも伝わってくる熱い映画だった。

 


 フェミニズムを学びはじめて(研究しはじめて)数年のわたしにもわかるような小ネタの数々は製作者からわたし/たちへの熱意のこもったバトンであるとおもった。そのバトンを受けとったわたし/たちはこれからどうすればいいのだろうか。それはそれぞれに違うだろう。だが、この作品をみる前と後では世界のあり方が大きく変わってみえるのではないだろうか。

 


 主人公であるエイミーやモリーはわたしとほとんど同年代である。しかしながら現状は彼女たちやわたし/たちがどんなに声を上げても変わらない世界だ。だが、そんななかでも少しずつでもいいから世界を変えていきたい。こんなクソみたいな社会を滅ぼしてあたらしく生きやすい時代をつくっていきたい。エイミーやモリーの情熱をともした力強いまなざしがくもらないように、つねに手をとりあって生きていきたい。

 


 ところでこの作品の主人公、エイミーとモリーの関係性はわたしにとってかなり理想的なものだった。エイミーはレズビアンとして描かれるものの、そのことでモリーと特別ななにかがあるわけではない。お互いのセクシュアリティを尊重しつつ、ときには叱咤激励する。フェミニズムという共通の信条を胸に、ふたりの関係性はより強くなる。わたしはずっとこのふたりのような関係性を求めていたような気がする。

 


 わたしは今まで『ののはな通信』の「のの」と「はな」の関係性を理想として生きてきた。ほんのひとときだけ燃えあがった恋の炎の思い出を胸にそれぞれ生きていくこと、それぞれの人生の中でお互いをいたわり尊重しながら生きていければよかったと何度おもったことか。だが、それは叶わなかった。それでもわたしは叶わぬ望みにいつまでもすがっていた。しかしそんなことをずっと胸に仕舞い続けていては心が沈んでしまう。ずぶずぶと沈み続けていつかは根腐れをおこしてしまう。

 


 そうなる前に『ブックスマート』に出会えてよかったと心からおもう。いま私に必要なのはエイミーとモリーのような関係である。

 


 わたしにとってのエイミーやモリーがあらわれる日が来るだろうか。そんな日が来ることを祈りつつフェミニズムへの見識をもっと深めようとあらためて心に誓うのであった。