絶対運命黙示録

だいたいツイッターにいます@wenoim

とある魔女の話

 


 ときは現代、あるところに魔女がいました。魔女はさいしょ魔女ではありませんでした。魔女はじぶんの愛する人の性別がじぶんと同じだというだけで魔女にされてしまったのです。

 魔女は一途な魔女でもありました。一途であるがゆえに一途にひとを愛しつづけた結果、たくさんの好きなひとができました。魔女の愛したひとはときに同じような魔女であり、山姥であり、奪衣婆たちでした。

 魔女は魔女や山姥や奪衣婆たちとなかよく暮らしました。

 いっぽうで魔女はじぶんやほかの魔女や山姥や奪衣婆たちを魔女や山姥や奪衣婆にした「にんげん」のことをうらんでもいました。「にんげん」は魔女や山姥や奪衣婆をたちじぶんたちとはちがう、異質のものだとおそれ、迫害し、「にんげん」以外のなまえをつけました。

 魔女は夢にみます。いつの日か魔女や山姥や奪衣婆たちと「にんげん」を解体するときを。「にんげん」という同質であるようにみえてじつは一枚岩ではないひとびとが解放され、ひとりひとりが迫害されずに生きてゆける日を。

 もし、「にんげん」が解体され、別個の存在として散り散りになったあかつきには、みんなで集まって踊り明かそう。きっと10年後も20年後も、そのずっとさきも、みんなで踊り、歌い、楽しくやっていける日を夢みて魔女はきょうも眠りにつきます。